この記事の内容は、2025年4月19日に開催された仙台市武術太極拳連盟の「太極拳の集い」での講和をもとに編集して「仙台市医師会会報」に掲載されたものです。
会員の皆様も参考にして下さい。
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太極拳:フレイル予防と健康寿命延伸への道
みやぎ太極拳協会
(医師) 飯澤 理
◆はじめに
現代社会において、高齢化の進展とともに注目を集めている課題の一つが、健康寿命の延伸です。身体的・精神的な自立を維持しながら、豊かな人生を送るためには、フレイル予防が重要な鍵となります。フレイルとは、身体能力や認知機能の低下、社会的孤立などが絡み合い、健康や生活の質に影響を及ぼす状態を指します。この課題に対する一つの効果的な取り組みとして、運動としての太極拳と社会参加としての太極拳サークルの活動が挙げられます。
1. 運動としての太極拳の魅力
太極拳は、中国発祥の伝統的な武術であり、緩やかな動きと深い呼吸を特徴とします。この運動は、柔軟性の向上や筋力維持、バランス感覚の強化に寄与します。特に高齢者にとっては、過度な負担をかけずに全身を効率的に動かせる点が魅力的です。フレイルの中核的な要因である身体的な衰えを防ぐだけでなく、転倒予防効果も期待できます。また、心身のリラックス効果やストレス軽減も報告されており、メンタルヘルスの向上にもつながります。
2. 社会参加としての太極拳サークルの価値
太極拳サークルへの参加は、単なる身体的な運動の枠を超えた恩恵をもたらします。グループでの活動を通じて、他者とのコミュニケーションや交流が促進され、社会的孤立の解消が図れます。仲間との結びつきが心理的な充足感をもたらし、生きがいや幸福感を高める効果が期待されます。また、共同での練習や成果の共有を通じて、自己効力感や達成感を得られる点も見逃せません。これらの要素は、フレイルの要因の一つである社会的・心理的な側面を補強する役割を果たします。
3. 相乗効果の重要性
運動としての太極拳と社会参加としての太極拳サークル活動は、単独では得られない相乗効果を生み出します。身体的な健康維持と社会的なつながりが相互に作用し、より効果的なフレイル予防と健康寿命の延伸が可能となります。この相乗効果は、単なる運動プログラムや孤立した趣味活動では実現し得ない独自の価値を提供します。
4. 先生方へのお願い
これらの利点をより多くの人々に享受してもらうためには、地域社会や行政による支援が欠かせませんが、加えて諸先生方による患者さんへのアナウンスが非常に効果があると考えております。日常診療において、フレイルやフレイルに陥る可能性のある患者さん、またこれから体を動かしてみたいという希望のある患者さんがいらっしゃったら、太極拳サークルへの参加を勧めていただければ幸いです。
◆結論
運動として太極拳を行うことと、社会参加として太極拳サークルに参加することは、フレイルを予防し、健康寿命を延ばすための強力な手段です。その相乗効果は、身体的・精神的・社会的な健康を包括的に向上させる点で、現代の高齢化社会においてますます重要な役割を果たすでしょう。太極拳の実践を通じて、多くの人々が健康で幸福な人生を送れるようになることを願っています。