「太極拳と制御性T細胞」
みやぎ太極拳協会
(医師) 飯澤 理
今年の日本人のノーベル賞受賞者に坂口志文教授がいらっしゃいます。坂口教授の受賞は生理学・医学の分野で「制御性T細胞 (Treg) 」の研究です。
Tregは、免疫の働きを抑制するリンパ球の一種で、過剰な免疫反応を抑える役割を持っていて、自己免疫疾患や慢性炎症を防ぎ、免疫バランスを保つうえで不可欠な存在です。
一方、太極拳は、ゆっくりとした全身運動、深い呼吸、そして瞑想的な集中を組み合わせた心身統合の運動で、免疫機能にも効果があります。例えば、ストレスホルモン(コルチゾール)を低下させたり、炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-αなど)を低下させると言われていています。さらに太極拳は、Tregを増加させ、「免疫寛容(tolerance)」を強化する方向に作用するという報告もあります。
太極拳は単なる運動ではなく、心身両面から免疫バランスを整える「生理的免疫トレーニング」であり、Tregの働きを助けることで、慢性炎症の抑制、自己免疫の予防、ストレス関連疾患の緩和に役立つ可能性があります。